鋳物の町工場をやっています。最近は鋳物でオリジナルの調理器具などを製作しています。
今回は調理器具のシーズニングについてのお話です。。
鋳物製品は長期にわたって使えるものですが、その為にはシーズニングは欠かせない作業です。
一見面倒に感じるシーズニングですが、ポイントさえ押さえておけば誰でも簡単にできます。
目次
結論
まず答えからです。
様々なところでシーズニングの方法が紹介されていますが、上記をやればいいだけです。
実践結果

こちらはオリジナルで製作している1合炊きの鋳物羽釜です。
写真左が鋳物素材状態、右がシーズニング後の状態です。市販されている鋳物製品の多くは、塗料が焼付塗装されているので鋳物素材の状態を見ることはあまりないかもしれません。
鋳物素材の状態では、少し濡れた手で触れたり、湿気のある部屋に放置するだけで簡単に錆びます。
この素材の状態にシーズニングを施すことで、下記のように簡単に焦げ付かない&錆びにくい状態にすることができます。もちろん使用後は洗剤で洗えます。
塗装状態でも素材状態でもシーズニングのやり方は同じです。
まるでテフロン加工のように目玉焼きもスルスルと剥がれます。テフロン加工は剥がれれば終了ですが、シーズニングの良いところは、繰り返し行うことでさらに強靭な皮膜を作ることができ、製品を長く使用できる点です。
手順
シーズニングの手順は極めて簡単です。
- 中性洗剤で洗い流し、水分を完全に拭き取る
- キッチンペーパを使い、グレープシードオイルを薄く全体に塗る
- 加熱し、白い煙が出て少しおさまったら火を止めて自然に冷ます
- 2と3を複数回繰り返す

1合羽釜は小さいのでタフまるJr.という小型のガスコンロでできましたが、30cmくらいまでの鍋やスキレットなら一般的なサイズのガスコンロで作業できます。
作業を複数回繰り返す中で、ひっくり返して加熱すると、全体的に均一な皮膜を形成することができます。
注意する点は
- 油は薄く全体に塗ること(不均一だとダマになります)
- 屋外や換気扇の下で行うこと(煙は悪臭をともないます)
- 急冷させないこと(熱衝撃による破損の恐れがあります)
- オイルを塗ったキッチンペーパーの取扱いに注意(酸化熱による発火の恐れがあります)
間違った情報
シーズニングについての記事はたくさんありますが、実は間違った情報が多く出回っています。
これは1番多い間違いです。
シーズニングの黒い皮膜の正体は簡単にいうと液体の油が固体になった(重合化)ものです。油の重合化のしやすさを示すヨウ素価を見てみると、オリーブオイルは75〜94と市販されている油の中でもかなり低く、非常に皮膜を形成しにくい部類です。ちなみにグレープシードオイルは124〜143です。
https://www.kanicamp.com/gear/blackpotter
正しくシーズニングされた製品は、洗剤で洗っても全く問題ありません。シーズニングの皮膜は洗剤では簡単に落ちません。
これは不要です。鉄臭さを無くすためにと言われているようですが、正しいシーズニングをしていれば食材と鉄は直接触れないので必要ありません。また、シーズニングが不完全で仮に鉄臭かったとしても、クズ野菜を炒めたところで特に効果はありません。
おすすめ記事2選
私は鋳物屋で、調理器具を何点か製造し、シーズニングもかなりの数をこなしてきました。その中でとても参考になった記事2選を載せておきます。
https://www.kanicamp.com/gear/blackpotter
KANI CAMPさんのブログです。シーズニングの方法についてかなり詳しく書かれています。当ブログで言っていることは本当かな、と思う方や理解を深めたい方は是非ご覧ください。非常におすすめです。
次は別所暮らしのユウさんの動画です。文章を読むのが面倒な方はこの動画で十分に理解できるかと思います。こちらもおすすめです。
余談
それほど大きなものでなければ、ガスコンロでシーズニングはできるかと思いますが、少し大きめの製品でしたら焚き火台などを使用するのもアリだと思います。
以前に少し大きめの鋳物鉄板を作ったのですが、ガスコンロでは難しかったので大型BBQグリルを使用しました。


キャンプで使用した際にも、しっかり洗って直火で軽くシーズニングできれば長持ちすることかと思います。